2014年12月29日

春にして君を離れ(アガサ・クリスティ)

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) -
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) -

ミス・マープルをBSでみて、なぜかはまってしまう。でクリスティを何か読んでみたくなり、マープルの原作ではなく何か別の、と思いちょっと検索してみると探偵ものではないというこれが出てきた。で近くの本屋に行くと偶然にも?あった。

初版は1944年。舞台設定は1930年のようだ。いやはやなんとも、解説で栗本薫が「哀しくて恐ろしい」と書いているがまさしく。一昨日読み終えているが、大掃除と餅つきをしながら、この本のシチュエーション、主人公の主婦ジョーンを自分にあてはめてしまう。

イギリスの片田舎の主婦ジェーン。48歳で子供3人はすでに独立。バグダッド近郊にいる娘への見舞いの帰路、列車の遅延で宿に連泊する間にこれまでの親子関係、夫婦の関係に疑問を抱き始める、というもの。一言でいってしまうと、自分中心に関係を見てる、一人がてんのおめでたい人だった、実は。といっては元も子もないか、でも、1944年に書かれたこれが、70年後の2014年の、日本の58歳の自分にじわーと沁みてくる。

農業をやりたかった夫を、家業の弁護士へと就かせ、子供たちは完全にはジェーンの進む方向には行かなかったがまあ、結婚して落ち着いたし、と満足していた。一人宿で思い返すうち疑問を抱くのだが、とどめは最後の夫の言葉である。「どうか、きみがそれに気づかずにすむように」 なんと恐ろしいことであろうか。しかしまた、自分をジェーンの子供にあてはめてみると、自分の母はまさにジェーンそのものだ。夫の言葉をそのまま母に言うだろう。栗本薫言うところの機能不全家族だったのか。ジェーンの娘も手紙で父に「どうかお母様には何も言わないで」といっている。自分も同じように面倒くさいことは母親には何も言わない。知らぬまま逝かせたい。クリスティはそういう意味で、帰りの車中では、己の自己満足に気づいたジェーンを、最後の最後で元のもくあみに戻したのか。

クリスティ54歳の時の刊行である。クリスティは学生時代に短編集5冊を続けて読んだきり。短編だと、事件のための事件みたいなとこもあった気がするが、この人間洞察には恐れ入る。しかしさすがイギリス、植民地支配の影響やすごい、カイロ、バグダッド、トルコの宿の従業員はインド人。帰りはヨーロッパ横断の列車の旅である。

シェイクスピアのソネット98番 春にして君を離れ 「壺齊閑話」さんのBlogに原詩と訳が載っていました。
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2010年08月07日

グロテスク(桐野夏生)


グロテスク

グロテスク

  • 作者: 桐野 夏生
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2003/06/27
  • メディア: 単行本




桐野作品「OUT」に次ぎ、いや「OUT」以上にずし〜んと重い。OUTは最後に主人公が開放される感じがあるけど、これは死んじゃってるだけに重たい閉塞感に体中さいなまされる感じだ。それに死に至る経緯が経緯だけに、できれば見たくなかったものを見せられたような感じか。

物語は1997年3月に起こった、あの有名なOL殺人事件がモデル。
なぜいい大学を出て、初の女性総合職として一流企業に勤めていたOLが売春のあげく殺されたのか。物語は実際の事件のモデルの「和恵」、そしてこの小説の語り部の「わたし」わたしの妹「ユリコ」、わたしの高校の同級生「ミツル」という3人を登場させている。独白によって進むこの物語、読み終わると、登場人物すべてに自分があてはまるような気がしてくる。

物語では、売春のあげく殺されるに至った和恵の心理の原点を、勉強ができることがいい子、という家庭環境と、それゆえ進学したさる私立大学付属高校での生活に求めている。付属高校でモノを言うのは何時から付属に入ったか、つまりその学校での由緒正しさ。中学で点数がよくても、ある程度の高校に入れば、そんな自尊心は砕かれる。それは公立に進んでも経験することだが、お金と生活レベルは高校生ではどうしようもない。

さらに就職した一流会社で待っていたのは「女」としての品定めだった。読んでて実はこれが一番和恵を打ち砕いたものだったんじゃないかと思ったのだ。彼女はこれに我慢できず、体で証明した? ある程度妥協すれば、現実で男を得られたかもしれない。同期に東大卒の女性を登場させているが、彼女には会社生活に草々に見切りをつけさせ、男にも妥協し?結婚させている。和恵はそれができない。力で自分の存在を認めさせようとするが、仕事はともかく、女としての存在は体を売ることでしか確認できなかった。とにかく和恵の独白の部分はものすごい。

物語は私を語り部に3人の手記と語り、そして加害者男性の手記で進む。終結は、美人なだけで勉強はできなかった(と姉が思っている)妹と、努力型の秀才和恵が売春のあげく同じ男に殺される。殺されたという事実はあるものの、そこに至る心理は5人全てちがっている。これは直木賞の「柔らかな頬」とも同じ書き方だ。どの人の供述も全部違い、本当の事は分からない、本当のことって一体何?と問うている。

小さい時から自分の美貌が男性を惹き付けることに気付いたユリエ。方やテストの点数をとることで存在を確認したかった和恵。全てを受け入れる男が和恵にいたらどうだったのか? ユリエには常に言い寄る男がいたがユリエは自分は「性愛の玩具」にしか過ぎないと思っている。男との行為は何なのか?それが桐野氏によって白日にさらされたということか。

桐野氏HP 氏自身の作品解説あり



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2008年05月18日

源氏物語の男君たち(TV)

この人この世界 NHK知るを楽しむ 源氏物語の男君たち
genji.jpg


教育TVで瀬戸内寂聴が語っているのをたまたまみた。
4月、5月の放送で第一回目がとてもおもしろかったのでさっそくテキストを買ったのだが、それ以後どうも見逃してしまっている。あと2回で終わってしまうのだが。

源氏物語に最初に出会うのは高校の古典の時間なのだが、これがとてつもなく退屈でつまらなくて、どうしてそんなにゲンジゲンジと言われるのかとんと理解できなかった。

それが解消されたのは大和和紀のマンガを読んでからである。
あさきゆめみし 1 完全版 (1) (KCデラックス)
あさきゆめみし 1

読んだのは10年位前だが、その時「高校の古典の時間にはまずこれを読んだらいいんじゃないか」と思ったものだ。古典の時間だと文法にばかり目が行って、あたまがぐちゃぐちゃになり筋どころではなかった。しかしこのマンガだとポイントの和歌と原文が示され、そして現代文のセリフでやっと流れがわかったのだ。

男性より女性の方がファンが多いのでは?と思うのだがどうだろう。やはり女性の描く男性である。女性にとって光源氏の行動は魅力的だ。あくまでやさしい。マンガを読む限り原点は最初の満たされない愛なのか、と思ったのだが、今回のテキスト、ページをめくると最初に目に入る文字は「男たちなんて、せいぜいこの程度」である。うーん、男性はどう感じるのだろうか?

「知るを楽しむ」番組ページテキストページ

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2006年11月04日

魂萌え・桐野夏生

魂萌え !
魂萌え !
 2005.4

1年半前の発売時の新聞広告は主人公は59才の主婦、桐野夏生が今度は高年女性のいきざまを描く、というような文句があって、もうこれは自分とは関係ない上の世代の話で全然読む気がないやと思った。ところが先々週NHKのドラマの第1回をみてこれはおもしろそうと思った。59才の敏子は夫の定年後2,3年、夫婦二人で悠々自適の暮らしをしていたところ突然夫を亡くす。そこに夫の愛人が現れるという新聞TV欄の案内だった。おまけにアメリカで食い潰した長男が帰ってきて財産分与を迫り長女はずっとアルバイト暮らしで年下のフリーターと同棲という設定。その敏子をとりまく状況が発売後1年経って子供の一人が社会人となった今年、俄に身近に感じだしたのである。

ずっと専業主婦で夫の会社勤めを支えてきたのに夫は別の世界を持っていたし、当然ながら子供たちは社会人になれば親からは心身ともに離れて行く。そして親がいらないわけではないけど当然自分の生活中心になる。今までは子供の立場だったがいよいよもって離れて行く子供を持つ親の心理が分かる年になってしまったのだ。

主演の高畑淳子がとても役にはまっている。金八先生の養護の先生とは一転。第1回をみてすぐ原作も読んでみたくなって一気に読んでしまった。テレビを見たあとなので原作の登場人物の顔はテレビの俳優さんの顔が浮かんでしまうがまったく違和感は無い。

桐野夏生のOUT(アウト)がとても好きであちらは40才前後の妻の心理が深夜の弁当工場の場面が特に、専業主婦であれ勤める妻であれ共感できるものだった。かなりエキサイティングな雰囲気だったがこの「魂萌え」はトーンは静かだ。人生のトーンは子育て期を頂点に山形を描くと思う。下りに入って徐々に静かになるがまだまだこれからよ、という空気が行間にみなぎっている。

映画化もされるみたいだがこちらは風吹ジュン、ちょっと違うかなあ。
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2005年03月04日

ひとひらの舟ー樋口一葉の生涯

三枝和子著 1992年 人文書院

一葉さんのお札も随分流通するようになりました。
貧乏の中で若死にした薄幸の女性、というイメージがあったのですが、
お札の発行にあわせて放映されたTVドラマがおもしろかったので、
興味を持ち、読んでみました。
すると、随分抱いていたイメージが違うのです。
生まれながらの貧乏なのかと思ったら、そうではなく山梨から出てきた父親は、
江戸時代末に農民から武士の「株」と言うのを買って、「武士」になり
そのまま明治では東京都?国?だったかな、官吏になって、
けっこう財をなして、父の死の10代後半まではけっこう裕福な暮らしだったらしいのです。

で父の死後貧乏になるのですが、小説を書いた時期は「奇跡の14ヶ月」といわれ、
その間「たけくらべ」とか雑誌に発表され、自宅は若い文学青年のサロン的な様相を示していたとか、断片のイメージとは違う人生を送った人だったというのがわかりました。

三枝和子さんのこの本は、小説のような評論のようなものなのですが、
わかりやすいです。

ひとひらの舟―樋口一葉の生涯 1992

で原作も読んでみようと、買ってみたのですが、1ページを5回くらい読んで、
2ページ目にいかない。挫折しております。
たけくらべ
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2005年02月26日

ステップフォードの妻たち

ステップフォードの妻たち アイラ・レヴィン著 早川文庫 2003.11(1972発表)

映画を見に行こうと思っていざ時間を調べたら、ありゃ夜9時からになってる。やっぱり先週行くべきだったなあ、と思って映画の公式ページを見ると原作もあるらしい。映画の宣伝だと、ステップフォードの街に引っ越してくるとなぜか女性は50年代の「古き良きアメリカ」タイプの”家庭の”妻になってしまう、これにはなにか訳がありそう・・というもの。最初黒髪短髪ズボンのニコール・キッドマンが金髪ワンピースになるのだ。それに原作者は「死の接吻」とか「ローズマリーの赤ちゃん」の原作者でもあるらしい、これはきっとドンデン返しの謎があるに違いない・・ と思いいざ本屋へ。ありました。

で展開はスピーディーでおもしろいです。しかし、幕切れが、例えるならこの先道があるに違いないと思って足を踏み出したら、何も無い空間で奈落の底に転落、という読後感。えっ? えっ? 何? ねえ秘密は何だったのよー。
そういえば「ローズマリーの赤ちゃん」も終わりはそうだったなあ。悪魔から救われるのかと思ったら囚われのまま(だったと思う) 

筋はまさに映画の宣伝どおり。主人公の子供がおやつをねだるのに「オレオちょうだい」とか
いうのに、ああナビスコはアメリカの会社だよなあと感心したり。
仕事を持った能力のある女性が、家庭に引きこもることへの皮肉を描いたものかと私は解釈したのだが、あの結末の意味するものは、その逆ともとれる。
72年発表だが、当時ウーマン・リブ運動の嵐の後といったところ。ベティ・フリーダンとかアメリカの女性運動家の活動がしごく当然のごとく会話にでてくる。

ニコール・キッドマンを大スクリーンで見たかったが、以前キャサリン・ロス主演で映画化されているという。
posted by simadasu.rose at 00:14| Comment(3) | TrackBack(1) | 本・女性(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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