2014年11月30日

ウイスキーとダンディズム(竹鶴孝太郎著)

ウイスキーとダンディズム 祖父・竹鶴政孝の美意識と暮らし方 (oneテーマ21) -
ウイスキーとダンディズム 祖父・竹鶴政孝の美意識と暮らし方 (oneテーマ21) -

副題にあるようにマッサンこと竹鶴政孝の孫・孝太郎氏の書いた本。同居の孫からみた祖父母である政孝、リタ、家族、工場回りの話で、これがめっぽうおもしろい。最初はなんだ便乗本かと思ったが、なんといっても同居していた人の書いた本である、生の姿が語られる。また孝太郎氏は生まれた環境を「所与のもの」と表現していて、著者は昭和28年生まれなので、リタは8歳の時に64歳で亡くなっているのだが、同級生のおばあちゃんと「違っている」とか「違ってない」とかではなく、もう自分にとって祖母が青い目なのは「あたりまえの普通のこと」なのだとある。

リタについては、漬物をつけたり、いかに日本人に同化したかと美談風に語られるが、「文化や美意識まで日本人のそれと入れ替えたわけではなく」、わが家といえども自分の部屋から出たら、神の目を意識しきちんとした格好をする、などという生まれ育った流儀を政孝は尊重し、その一方で政孝はリタに遠慮することもなく自分の慣れ親しんだ和の精神と文化を尊んでいたので、「わが家ではふたつの文化が溶け合うことも、反発しあうこともなく」自然な形で共存していたと書いている。政孝は和食を好み、そのためリタは梅干しや沢庵を漬けていたのだが、出張でいない時にはここぞとばかり食卓にはローストビーフなどが並んだという。ただ、父母は大人になってこういう生活になったので葛藤があったと思うが、自分は生まれた時からそうなので、何の不思議も葛藤もなく和の政孝流と洋のリタ流のふたつの流儀が仲良く共存している、と書いている。

森瑤子の小説の世界では、養女のリマにどうして母の目が青いの?として、母に買ってもらった青い目の人形の目を黒く塗る、という場面が出てくる。本当の子供だったら?とか小説の中だから、というのもあるが、やっと孫の代になって、リタは受け入れられたという気がする。

孝太郎氏の覚えている、祖母リタから母に伝わったスープや件のクリスマスプディングなどのリタの料理のレシピや、また祖父政孝の毎晩の水割りは孝太郎氏の妹が作っていたとか、まさに暮らしがしのばれる。そして、リタが亡くなった朝「おばあちゃんが死んじゃった、おばあちゃんが死んじゃった」とリビングまで聞こえた声が今も耳に残っているという。そして祖父の亡くなる病室では「文化の違う人間同士が一緒になるのは大変なことだ。わしは、おばあちゃんには苦労をさせてしまった。だからお前は国際結婚はするなよ」であったという。

著者は15歳まで余市で過ごし、そこでの生活はかなり野性味あふれるものだ。項目に「七光りの葛藤」があるが、著者が就職する昭和50年頃にはすでにニッカは銘柄会社である。結局ニッカに就職し約20年勤め3代目は3代目でいろいろ葛藤はあったようであるが、外国人の祖母を所与のものとして受け入れたのと同じく、基本的にとても素直な性格の人という印象を持ち好感を持った。
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2014年11月28日

望郷(森瑤子)

望郷 (角川文庫) -
望郷 (角川文庫) -

竹鶴リタの物語、読み終わりました。森瑤子ワールドの中のリタはなんだか悲しいなあ。一生懸命生きて、愛する夫はきっと労わってくれた、でもそれ以上に日本に同化しようとすごく努力した、だけど完全にはなれなかった、それを「望郷」という題名で表したのではないか。

「望郷」ではリタの戦死した婚約者への感情の動きから描くことで、よりリタという人間の根っこのところへの理解が深まる。。子供を流産してしまい、自分の血の入った分身との生活が叶わなくなって、「初めてニッポン人にならなければならないと悟った」と描いている。そしてリマという養女との行き違いの生活を森瑤子は想像たくましく描く。ここのところがこの物語を読んで悲しく感じるところなのだ。

夫の姓になって夫の家族と住み、自分の育った土地を離れたいわゆる「お嫁さん」になった日本人の妻の場合でも、いくつになっても実家をなつかしく思いだす、というのはあるだろう。でも子供を産むことで、夫の家の跡取りの「母」となることで、新しい”夫の側の”土地での地位が確定される、という構図がある。リタはそれが叶わなかった。そこのところじゃないかな。リマとの別れの後の、威氏とも孫ともいい関係だったようだが、森瑤子は威に、「僕は何人子供がいても養子には出すまいと思う」と語らせている。

ただ、威氏のニッカのHPでのエッセイを読むと、10代後半で納得の上での養子縁組でもあったので、何も違和感はなかったと書いている。おじの会社を継ぐためのもの、であって、「リタおふくろ」「政孝おやじ」と書いているように、実父母は別に厳然として存在し、ニッカという会社、いわば大名の家督相続、仕事と養子縁組は一体、というように見える。

ともかく、この森瑤子ワールドの中のリタはけなげにスコットランド人として日本人として、精一杯その生を終えた、といえます。
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2014年11月08日

リタの鐘が鳴る(早瀬利之)

リタの鐘が鳴る―竹鶴リタの生涯 -
リタの鐘が鳴る―竹鶴リタの生涯 -  1995

「ウイスキーと私」に次いでこちらも読んでいる。ウイスキーと私が自伝形式であるので、妻のリタは夫である政孝からの視点だが、こちらは評伝であるので両者均等に見ている。リタの心の動きがこちらの方が分かる。・・がしかし文はあまりうまくないんじゃないか? 会話部分がどうしてもウソっぽい。。「アンのゆりかご」と同じく、小説としては読み心地が悪く、伝記としては資料が無さ過ぎで物足りない。 伝記ものの難しさか。伝記として書くなら歴史書のように会話部分など入れずにあくまでも資料に基づいて書いた方が好み。子供の頃読んだ伝記物はあれは「伝記物語」か、まだそちらの方が現実味がある。こうなると「小説」の力を感じずにはいられない。宮尾登美子の「序の舞」とか著者の視点で登場人物が生き生きと動いている。なんと森瑤子氏が「望郷 」 という題でリタのことを小説にしていると知り今読んでいるところだ。


リタの鐘がなる 竹鶴政孝を支えたスコットランド女性の生涯 (朝日文庫) -
リタの鐘がなる 竹鶴政孝を支えたスコットランド女性の生涯 (朝日文庫) - 2014.9
読んだのは図書館にあった単行本ですが文庫本も出ています。
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マッサンとリタ(オリーヴ・チェックランド)

マッサンとリタ―ジャパニーズ・ウイスキーの誕生 -
マッサンとリタ―ジャパニーズ・ウイスキーの誕生 -  2014.8NHK出版

リタについての外国人の書いた伝記ということで読んでみました。なんといってもこの本の一番の評価点は、書いてある一文一文がどの参考文献に基づいているかきちんと載っていることでしょう。政孝は日経の私の履歴書による自伝「ウイスキーと私」のほか、雑誌やインタビューなどがあり、またスコットランドでの「エルギン日記」やウイスキー製法のノートなども見てこの本は書かれています。政孝やリタにまつわる文献を知るだけでもこの本を見る価値はあります。

政孝の自伝では分からなかったことも、こちらでは詳しく分かります。また、スコットランドの地図が載ってるのもいいです。それに政孝の自伝で、ホームシックで毎夜涙にぬれていたのにリタの家族と過ごすようになって、ホームシックがうそのように治ってしまったとあり、ここをリタの家族と行ったり来たりして、と読んでいたのですが、この本を読むとリタの家の下宿人となっていたとあり、そうだったのかと思いました。それで政孝がリタと会ったのはリタの父が亡くなってからである、と自伝にお孫さんが事実と違う点についてとして一文をのせていたのですが、その意味がわかりました。
posted by simadasu.rose at 13:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・歴史地理伝記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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